今回は、いつも私が片付けの相談を受ける中で自分事のように感じている「片付けと匂い」の関係についてお伝えします。
馴染んだ匂いが消える瞬間と不安
皆さんは、モノや空間の匂いを嗅ぐと、幼少期や、その時に感じたことや出来事を思い出すことはありませんか? 私は「白い前かけと昔の洗濯石鹸」の匂いには私が3歳の頃の母を思い出します。今、孫たちが帰った後の大洗濯をしています。馴染みがある匂いが洗濯でスッと消えた時にあることを思い出しました。
母の遺品整理をしていた時、衣類やタオル・ハンカチの匂いが切なくて、洗濯をしたり捨ててしまうと、「二度とこの母の思い出の匂いに出会わない」、この匂いが母との時を繋いでいるような、そんな気にさえなり当時は洗濯ができなかったのです。
同世代の方々からも同じような相談をもらうことがよくあります。「匂いがあるから思い出せる」「だからこんなモノでも捨てられない」と。半面、自分の「これからの人生」をいきいき生きるには、いつまでもそのモノに縛られてはいられないのです。このコトも片付けにも影響を与えると考えています。
高齢者は馴染みのモノをそばに・・・
また、高齢者においては認知症にも影響があると聞いております。施設に入る時には、限られた物しか持ち込めず、これまで使っていた馴染みの日用品やタオル・洗面具・食器などを捨てて、ほとんど新しいモノを新調した方が、早々に認知症を発症されたとか・・
子供さんと同居をするのに、古い箪笥や布団のような大きな家財や、写真・日常小物を置いて出た親御さんが、3か月で認知症を発症されました。家具は素材・色合い、扉・引き出しの位置なども体が覚えています。布団も風合いや匂いなども馴染みがあります。写真は人生が詰まっています。それをいきなり失くすことで少なからず影響を感じました。
捨てないことで、心豊かに生きることも
処分が悪いわけではありませんが、古くてもモノには説明がつかない感覚や心地よい感触、昔の思い出がよみがえり、それが脳を元気にする力、心を豊かにする源でもあるように思います。